今月のQ&A

R6.4月18日のニュース

ワークルールの規制改革に関する提案に対する処理方針が示されました
4月17日、政府の規制改革推進会議の第5回働き方・人への投資ワーキング・グループが開催され、競業避止義務の明確化に関する検討とあわせて規制改革・行政改革について企業、団体等からの提案を受け付ける「規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)」に対して令和5年3月15日〜令和6年2月16日に示された回答がまとめて示されました。

ここでは、主な厚生労働省の回答を紹介します。

●出勤日数の変動に伴う通勤費を考慮した標準報酬月額の随時改定の対象拡大
 → 対応不可
 → 通勤費を実費払いで対応し、出勤日数が大幅に変動したため、標準報酬月額の差が2等級以上生じた場合、その額に変動があったときは、固定的賃金に関する変動とは認められず、随時改定の対象外
 → 随時改定については、保険事務の効率化および簡素化の観点から、固定的賃金の変動等を要件としているところですが、標準報酬月額の適切な設定については、今後も必要に応じて検討

●フレックスタイム制の柔軟化
 → 対応不可
 → フレックスタイム制と1カ月単位の変形労働時間制とを併用を可能とすべきとの提案については、両制度は働く時間を決める主体が異なるため、併用を可能とすることは困難

●36協定における振替の考え方
 → 対応不可
 → 1カ月や1年単位の変形労働時間制において休日労働をする際、振替休日をノーワーク・ノーペイとする賃金の計算と同様の考え方に基づき、休日労働を他の週に振り替える際には、週の労働時間数も変更し、時間外労働時間を計上させない等、36協定における限度時間の考え方を見直すとの提案については、1週単位の法定労働時間を40時間以上のものと設定するような制度を認めることは困難。就業規則等の定めに基づいて事前に他の週に法定の休日を振り替えている場合であっても、当該週に労働を行ったことは事実であり、振り替えたことにより当該週の労働時間が一週間の法定労働時間を超えている場合には、その超えた時間は時間外労働とされるべきであり、対応するのは困難

●副業・兼業時における「合意書」届出の義務化および勤務状況報告の義務化
 → その他
 → 労働者の申告等がない場合には労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が事実と異なっていた場合でも、その時間を通算していれば足りるとして、法違反にならないといった解釈を示しているところ。労働者のプライバシー保護の観点からも、申告等が強制されることがないようにすることが必要である等の意見もあり、副業・兼業の届出書の提出および勤務時間状況の報告の義務化については慎重な検討が必要

●職業安定法における職業紹介事業と募集情報等提供事業との区分等に関するルールの明確化
 → 対応
 → 有料職業紹介事業者には、事業所ごとに法定の帳簿書類を作成して備付ける義務や雇用主に対しあっせんした無期雇用就職者に関する離職調査を行う義務が課せられているが、雇用主が個人情報保護法抵触のおそれがあることを理由に提供しないケースがあることについて、個人情報保護法に抵触しないことを明確にすべきであるとの提案については、法令的な整理を通達(職業紹介事業の業務運営要領)で新たに示し、職業安定法施行規則に基づく必要な調査の実施と、指針に基づく雇用主(求人者)における可能な限りの調査協力が適切に行われるよう、周知等に努める
 → 実施時期:通達改正に係る必要手続等が完了次第

●事業主を異にする副業・兼業をする者への時間外割増賃金支払いの撤廃
 → 検討を予定
 → 「規制改革推進に関する中間答申」(令和5年12月26日第18回規制改革推進会議決定)において、「割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における行政解釈の変更も含めて検討」とされたところであり、これに基づく検討を行っていく予定

なお、競業避止義務の明確化に関する検討については、厚生労働省、経済産業省、公正取引委員会のほか、有識者より現行制度に関する説明等があった後、副業・兼業や転職活動において競業避止義務をめぐる取扱いがネックとなっていることを踏まえ、引き続き明確化に関する検討をすることとされています。

R6.4月17日のニュース

令和6年財政検証のオプション試算(案)が示されました
4月16日、第14回社会保障審議会年金部会が開催され、令和6年財政検証のオプション試算(案)、経済前提等が示されました。

オプション試算(案)としては、次の5つが示されました。

●被用者保険のさらなる適用拡大
 → 適用対象となる短時間労働者の企業規模要件や個人事業所における非適用業種の適用範囲を見直した場合
 → 賃金要件や労働時間要件等についても見直しを加え、一定程度働く被用者をすべて被用者保険の適用対象とした場合

●基礎年金の拠出期間延長・給付増額
 → 保険料拠出期間を現行の40年(20〜60歳)から45年(20〜65歳)に延長し、拠出期間が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みとした場合
 
●マクロ経済スライドの調整期間の一致
 → 基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)に係るマクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合

●在職老齢年金制度
 → 在職老齢年金制度の見直しを行った場合

●標準報酬月額の上限
 → 厚生年金の標準報酬月額の上限(現行65万円)の見直しを行った場合

今後については、令和6年夏の財政検証結果の報告に向けて検証作業が進められます。夏以降は次期制度改正の内容について議論が行われ、令和6年末に取りまとめを行うとのスケジュール案が示されています。

R6.4月16日のニュース

令和6年度両立支援等助成金の各種資料が公表されています
厚生労働省より、令和6年度両立支援等助成金の各種資料が公表されています。

次のものが公表されています。

●両立支援等助成金のご案内(リーフレット)
●両立支援等助成金支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)(パンフレット)
●支給要領(令和6年4月1日時点) 
●支給申請書
●電子申請用申請様式
 (注)電子申請の場合の申請書の様式は、通常の申請と一部異なります。

令和6年度からの変更点は、下記のとおりです。

●出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)【拡充】
 → 第1種<男性労働者の育児休業取得>   
   支給対象労働者数を3人までに拡充
 → 第2種<男性の育児休業取得率の上昇等>
   プラチナくるみん認定事業主への加算措置を新設

●柔軟な働き方選択制度等支援コース【新設】
 → 主な要件
    @ 柔軟な働き方選択制度等を複数導入
    A 「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づき、制度利用および利用後のキャリア形成を円滑にすることを支援する方針を社内周知
    B 制度利用者と面談を実施し、「面談シート」に記録
    C 面談結果を踏まえ、制度利用者の「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成
    D 開始から6カ月間で柔軟な働き方を可能とする制度を所定の基準以上利用
 → 柔軟な働き方選択制度等
    A 始業終業時刻の変更等(フレックスタイム制時差出勤制度・)
    B 育児のためのテレワーク等
    C 短時間勤務制度
    D 保育サービスの手配・費用補助制度
    E  子の養育のための有給休暇(子の養育を容易にするための休暇制度・法を上回る子の看護休暇制度)
 → 助成額
    ・柔軟な働き方選択制度等を2つ導入し、対象労働者が制度を利用:20万円
    ・柔軟な働き方選択制度等を3つ以上導入し、対象労働者が制度を利用:25万円

●育児休業等支援コース(職場復帰後支援)【廃止】

●介護離職防止支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)、育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)【終了】

R6.4月15日のニュース

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に関するパブリックコメント募集が行われています
4月12日、公正取引委員会と厚生労働省は、連名で「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に関するパブリックコメント募集を開始しました。

「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされていた施行日について、「令和6年11月1日」と示されています。

次の6つが対象となっています。

1 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)
2 公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(案)
3 厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(案) 
4 特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(案)   
5 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)  
6 本法と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方(案)

上記5は、フリーランス法の「運用の統一を図るとともに、法運用の」透明性及び事業者の予見可能性を確保し、違反行為の未然防止に資するため、本法等の解釈を明確化することを目的として策定」されるもので、次のような構成となっています。

第1部 定義(本法第2条)
 1 特定受託事業者(本法第2条第1項)
 2 特定受託業務従事者(本法第2条第2項)
 3 業務委託事業者(本法第2条第5項)
 4 特定業務委託事業者8本法第2条第6項)
 5 報酬(本法第2条第7項)
第2部 特定受託事業者に係る取引の適正化
第1 業務委託事業者に求められる事項(本法第3条及び第6条第3項)
 1 特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等(本法第3項)
 2 報復措置の禁止(本法第6条第3項)
第2 特定業務委託事業者に求められる事項(本法第4条及び第5条)
 1 報酬の支払期日等(本法第4条)
 2 特定業務委託事業者の遵守事項(本法第5条)
第3部 特定受託業務従事者の就業環境の整備
 1 募集情報の的確な表示(本法第12条)
 2 妊娠、出産もしくは育児又は介護に対する配慮(本法第13条)
 3 業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等(本法第14条)
 4 解除等の予告(本法第16条)

このうち、第3部の「 4 解除等の予告(本法第16条)」では継続的業務委託に係る契約の解除等の予告に関する解釈として、次の内容が示されています。

(1) 継続的業務委託に係る契約(本法第16条第1項)
(2) 契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)をしようとする場合(本法第16条第1項)
(3) 事前予告の方法(本法第16条第1項及び本法省令(注)第3条)
(4) 事前予告の例外事由(本法第16条第1項及び本法省令第4条)
(5) 理由開示の方法(本法第16条第2項及び本法省令第5条)
(6) 理由開示の例外事由(本法第16条第2項及び本法省令第6条)
 (注)厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則

R6.4月の最新ニュース

2024-04-12
営業秘密漏洩に関する相談が最多に(4/12)

警視庁が11日に公表したまとめによると、全国の警察が2023年に摘発した営業秘密侵害事件は26件で過去2番目に多く、警察への相談件数(78件)は最多だった。転職者の不正持出しが多く、転職者数の増加が背景にあるとみられる。4月施行の改正不正競争防止法では、営業秘密の使用等の推定規定の適用対象に産業スパイに加えて元従業員や業務委託先等が追加され、訴訟が増えるとみる弁護士もいる。

2024-04-12
育児・介護休業法改正案 審議入り(4/12)

11日、育児・介護休業法改正案が衆院本会議で審議入りした。企業に対し3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者が多様な働き方ができる制度の導入を義務付ける。子の看護休暇は対象となる子の年齢を引き上げ、取得できる事由を子の行事参加等(運動会などの行事は除く)に拡大する。今国会での成立を目指し、2025年4月以降順次施行される。

2024-04-12
基礎年金の保険料納付期間延長等を試算(4/12)

厚生労働省は、今年の財政検証で年金制度改革に向けた各種試算を行う。基礎年金の保険料納付期間を45年に延長した場合や、在職老齢年金制度を緩和・廃止した場合の影響を試算する。また、マクロ経済スライドについて、基礎年金での抑制期間を見直した場合の影響等も試算する。試算を踏まえて年末までに改革案をまとめ、2025年通常国会への関連法案提出を目指す。

2024-04-10
マイナ保険証利用促進 医療機関へ最大20万円(4/10)

武見敬三厚生労働大臣は9日、マイナ保険証の利用を増やした医療機関に最大20万円支給する方針を明らかにした。5〜7月を集中取組月間とし、この間に利用者数を増やした診療所には最大10万円、病院には同20万円を支給する。マイナ保険証の利用率は3月時点で3.47%と低迷している。

2024-04-09
実質賃金23カ月連続減少(4/9)

厚生労働省が8日に発表した2月の毎月勤労統計調査(速報)によると、1人当たり名目賃金(現金給与総額)は前年同月比1.8%増となった一方で、1人当たり実質賃金(物価による影響を考慮した賃金)は前年同月比1.3%減となった。23カ月連続の減少となる。

2024-04-04
テレワーク中の長時間労働で労災認定(4/4)

テレワークでの長時間労働により適応障害を発症したとして、補聴器メーカーに勤務する50歳代の女性が、横浜北労働基準監督署から労災認定された(3月8日付け)と、女性の代理人弁護士が3日の記者会見で明らかにした。テレワーク中の過重労働による労災認定は異例という。事業場外みなし労働時間制が適用されていたが、上司から頻繁に業務上の連絡等がありパソコンから離れられない状況で、労基署は同制度の適用を違法と判断。発症前2カ月間の時間外労働が月100時間を超えていたことなどから認定されたとのこと。

2024-04-02
インフレ下の取引価格据置きは下請法違反のおそれあり(4/2)

公正取引委員会は1日、下請法違反の「買いたたき」に関する運用基準を明確にする見直し案として、「公表資料でコストの著しい上昇が把握できる場合において、据え置かれた下請代金」と明記した内容を示した。意見募集のうえ、5月中をめどに成案を公表する。
幅を広げる。

R6.4月12日のニュース

「令和6年分所得税の定額減税Q&A」の令和6年4月改訂版が公表されています
4月11日、国税庁の定額減税特設サイトに「令和6年分所得税の定額減税Q&A 令和6年4月改訂版」が公表されました。

次の問が修正・追加されています。

【定額減税の概要】
1−7 定額減税の実施方法(給与所得以外)【令和6年4月修正】
1−9 定額減税の実施方法(公的年金等)【令和6年4月追加】
1−10 源泉徴収で定額減税を行う公的年金等の範囲【令和6年4月追加】

【適用対象者】
2−7 基準日前に死亡退職・非居住者となった人に対する定額減税【令和6年4月修正】
2−8 所得制限を超える人から定額減税不要の申出があった場合【令和6年4月追加】
2−9 青色事業専従者に対する定額減税【令和6年4月追加】

【基準日在職者】
3−5 休職者に対する定額減税【令和6年4月追加】

【年調減税の方法等】
9−3 源泉徴収簿の記載方法【令和6年4月追加】

【源泉徴収票・給与支払明細書・徴収高計算書】 
10−1 源泉徴収票への記載方法【令和6年4月修正】
10−2 所得制限を超える人の源泉徴収票の記載方法【令和6年4月追加】
10−3 外国人技能実習生の源泉徴収票の記載方法【令和6年4月追加】
10−6 同一生計配偶者や扶養親族となっている人の源泉徴収票の記載方法【令和6年4月追加】
10−7 源泉徴収票の「控除外額」と給付金【令和6年4月追加】(注)
 (注)減税前の税額が少なく、定額減税しきれないと見込まれる方には、定額減税しきれないと見込まれる概ねの額(調整給付。令和5年の課税状況に基づき、給付額を算定)が1万円単位で給付されます(合計所得金額1,805万円超の方は対象外)。原則、令和6年度分の個人住民税額等について市区町村が情報を確認した後、対象となる方に各市区町村より案内される予定で、手続きや具体的な給付方法は市区町村ごとに異なります(各市区町村が定める申請期限があります)。

【各種給付措置】
12ー1 定額減税と併せて行われる各種給付措置【令和6年4月修正】
12ー2 定額減税と併せて行われる各種給付措置に対する課税【令和6年4月追加】

R6.4月11日のニュース

改正マイナンバー法等の施行日を2024年5月27日と定める政令が閣議決定されました
4月10日、デジタル庁は改正マイナンバー法等の施行日を2024年5月27日と定める政令が4月9日に閣議決定されたことを公表しました。

施行に伴う主な改正内容は以下のとおりです。

●国外転出者のマイナンバーカード継続利用
 → マイナンバーカードを海外で継続利用できるようになり、これまで、海外へ転出する際はマイナンバーカード・通知カードどちらも返納が必要でしたが、海外に赴任・留学する場合でもマイナンバーカードが失効することがなくなります。
 → 在外公館でマイナンバーカードの申請や受取り等が可能になります。手続きの詳細は、施行日までに総務省と外務省から公表される予定です。

●マイナンバーカードかざし利用
→ マイナンバーカードの利用方法のうち、暗証番号を入力しない、いわゆる「かざし利用」に関する規定が施行され、マイナンバーカードかざし利用クライアントソフトをインストールした自治体で図書館カードとしての利用等、かざし利用が可能になります。

●税・社会保障等の分野の国家資格(医師等)をマイナンバー利用事務に追加
 → 約80の国家資格等がマイナンバー利用事務に追加されます。
 → 国家資格等情報連携・活用システム(国家資格システム)とマイナポータルのデータ連携により、国家資格関係事務における各種申請手続のオンライン化や資格情報の連携などのデジタル化が推進され、2024年度からの順次サービス開始を目指す、とされています。
 → オンライン・デジタル化により、社会保険労務士を含む搭載資格の保有者は、次のようなことができるようになります。
   ・マイナポータルからの、資格の新規取得・住所変更のオンライン申請
   ・マイナンバーを活用した連携による、住民票や戸籍に関する添付書類の省略
   ・通知される申請に必要な支払いのオンライン決済
   ・登録情報がいつでも確認できる
   ・デジタル資格者証( 資格を保有していることの確認ができる電子データ)の閲覧

●公金受取口座登録方法の拡充
 → 新たに創設された行政機関等経由登録の特例制度の実施により、年金受給者に対して年金受給口座を登録するか否か等が書留郵便等により通知され、同意を得た場合または一定期間内に回答がなく同意したものとして取り扱われる場合、当該口座を公金受取口座として登録できることとなります。

R6.4月10日のニュース

在宅勤務手当が割増賃金の基礎となる賃金への算入を要しない場合の取扱いが示されました
4月9日、厚生労働省のデータベースに「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)が掲載されました。

これは、規制改革実施計画(令和5年6月16日閣議決定)において、「在宅勤務手当のうちどのようなものであれば、合理的・客観的に計算された実費を弁償するもの等として、割増賃金の算定基礎から除外することが可能であるかについて検討し、必要な措置を講ずる」とされたのを受けて発出された通達です。

以下の「実費弁償の考え方」および「実費弁償の計算方法」に照らして、事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、当該在宅勤務手当については労基法11条の賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金への算入は要しない、とされています。

【実費弁償の考え方】
●実費弁償として支給されていると整理されるためには、当該在宅勤務手当は、労働者が実際に負担した費用のうち業務のために使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが外形上明らかである必要がある
●就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示される必要があり、かつ、当該計算方法は在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法である必要がある
●例えば、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの等は、実費弁償に該当しない

【実費弁償の計算方法】
●「在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法」としては、以下の方法などが考えられる

(1)国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(以下、「国税庁FAQ」という)で示されている計算方法

(2)(1)の一部を簡略化した計算方法
 → 通信費および電気料金については、在宅勤務手当の支給対象となる労働者ごとに、手当の支給月からみて直近の過去複数月(例えば、3カ月程度とすることが考えられる)の各料金の金額及び当該複数月の暦日数並びに在宅勤務をした日数を用いて、業務のために使用した1カ月当たりの各料金の額を(1)の例により計算する
 → この場合は、在宅勤務手当の金額を実費弁償として一定期間継続(最大で1年程度とし、「一定期間」経過後に改めて同様の計算方法で在宅勤務手当の金額を改定することが考えられるが、労働者が実際に負担した費用と乖離が生じないよう適切な時期に改定することが望ましい)して支給することが考えられる。
 → 実費弁償の考え方に照らし、常態として当該在宅勤務手当の額が実費の額を上回っているような場合には、当該上回った額については、賃金として割増賃金の基礎に算入すべきものとなる

(3)実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
 → 実費の額を上回らない限りにおいて、実費弁償になると考えられるため、実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定めたうえで、当該単価に在宅勤務をした日数を乗じた額を在宅勤務手当として支給することは、実費弁償に該当する
 → 「実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定め」る方法の例
 ア 当該企業の一定数の労働者について、国税庁FAQ問6から問8までの例により、1カ月当たりの「業務のために使用した基本使用料や通信料等」「業務のために使用した基本料金や電気使用料」をそれぞれ計算する。
 イ アの計算により得られた額を、当該労働者が当該1カ月間に在宅勤務をした日数で除し、1日当たりの単価を計算する。
 ウ 一定数の労働者についてそれぞれ得られた1日当たりの単価のうち、最も額が低いものを、当該企業における在宅勤務手当の1日当たりの単価として定める。

その他、既に割増賃金の基礎に算入している在宅勤務手当(実費弁償に該当するもの)を上記に照らして割増賃金の基礎に算入しないこととする場合、労働条件の不利益変更に当たると考えられるため、法令等で定められた手続き等を遵守し、労使間で事前に十分な話合い等を行うことが必要であることに留意すること、とされています。